自由な生き様が、だれかの刺激に。

岐阜・池田町「ふれ愛の家」の日常から

 山々に囲まれたのどかな風景の中にある「ふれ愛の家」。

ここでは、障がいや難病のある方が通所し、生活のサポートを受けながら、下請け作業や表現活動などを行っている。

 一人ひとりの個性を見い出し、尊重する「ふれ愛の家」の日常から、何を感じるだろうか。

混沌の中にも、秩序がある

 なぜだろう。“混沌”としているのに、“混乱”はしていない。夢中になって画用紙にクレヨンで絵を描く人、真剣な表情でドローンを操縦する人、黙ってじっと座る人、言葉にならない声を発し何かをしきりに訴える人。岐阜県西部、揖斐郡池田町にある池田町障害福祉サービス事業所「ふれ愛の家」の日常は極めて自由だ。利用者はそれぞれ思い思いの時間を過ごしており、その光景は一見するととりとめのない時間が複雑に交錯し、入り乱れているかのようだ。しかし、その場に少しの時間身を置けば、決して乱れておらず、むしろ秩序があることが感じられる。それは何らかのルールや規則に縛られたものではなく、全員が自由であることから生まれる緩やかな一体感。言い換えれば、「自由であること」がこの場所の唯一のルールなのかもしれない。同じ空間に様々な利用者の自由が重なり流れる時間はとても穏やかだ。

 今でこそ、何よりも一人ひとりの自由を尊重する「ふれ愛の家」だが、一時はいかに作業効率を上げ、工賃を向上させるかを重視していたこともあった。物を置く場所や作業の際に座る位置を決め、スムーズに作業が回るよう徹底的に管理をした。作業に気が向かない人がいれば厳しく指導をした。その結果、工賃は上がったが、だれも幸せそうではなかったという。もっと大幅に工賃が向上すれば、幸せな未来が待っているのかもしれない。しかし、そこにたどり着くまでの道のりで、みんなが苦しい思いをしなくてはならないのであれば、たとえ作業効率は下がったとしても、今も将来も楽しい道を選んだ方がいい。座りたい場所に座って、作業をしたくないときはやらなくていい、踊りたい人はいつでも踊ればいい。「ふれ愛の家」の自由はこうして生まれた。

 

障がいがあるからこそできる、

個性的で自由な生き方

 自由とはいえ、それはただ放っておくことではない。個性豊かな人々が共存するなかで、みんなが自由であることは非常に難しい。だれかの自由が他者の自由を妨げることがあるかもしれない。そもそもやりたいことが見つからない人もいる。「ふれ愛の家」では、利用者が普段どんなことが好きで、何に夢中になるのか、日常生活の中から一人ひとりの特性に気付くことを大切にしている。障がいがあることで、わたしたちの常識を越える行動ができたり、自由な発想から思いもよらない表現が生まれることがある。彼らの個性的で自由な生き様は、見ている人に驚きや感動、新しい発見を与えてくれるのだ。

 そんな彼らの生き様をダンスや音楽などのパフォーマンスを通してもっと多くの人に届けられないかと、2014年「ふれ愛の家」では施設を飛び出してパフォーマンス活動をスタート。岐阜県内の道の駅でのイベント出店の際に、突然音楽を流してダンスを踊り、投げ銭を集めたのが始まりだ。しかし、当時は障がい者によるアートやパフォーマンスに対しての理解が浅く、「障がい者を見せ物にしている」「投げ銭を集めるなんてみっともない」と利用者の保護者やお客さんの一部からも意見があった。それでも、パフォーマンスを通して表現される、障がいがある人たちの自由な生き様は人々に刺激を与えると信じて、「ふれ愛の家」は試行錯誤を重ね活動を続けた。

 

他者の日常をおもしろがること

 利用者の好きなことや、こだわりを見つけたら、それが一般の人にどう伝えればおもしろく映るのか、表現方法を変えたり、言語化をして、ステージでダンスや演奏、歌などで表現する。ステージ上の利用者と、観客両方の反応を見ながら、利用者の「好きなこと・やりたいこと」と観客が「おもしろがること」の釣り合いが取れる表現方法を探す。その繰り返しだ。そして、パフォーマンスと言えども、ステージ発表のために作り込まれたプログラムではなく、あくまでも日常を切り取り、自然体のまま表現することを大切にしている。利用者にとっては当たり前のことや、ただ好きで夢中になっていることが、他のだれかの救いになったり、おもしろがって見てもらえることにより、一人ひとりに役割が生まれ、利用者がより個性を発揮し自由に生きることができる。これほどまでに幸せな循環が社会にはあるだろうか。

 「ふれ愛の家」が目指すのは、施設の中で生まれたこうした幸せの循環を、社会にも広げていくことだ。「ふれ愛の家」では、来客があれば握手やハグで歓迎する。障がいがあるかないかは全く問題ではなく、だれにでも寛容な空気が流れている。突飛な行動や常識から外れた習慣は人を驚かせるかもしれないが、他者を傷つけたり、いがみ合うことはない。施設のなかではみんなが幸せそうに生きている。だれかが奇抜な行動や発言をしたとしても、それを常識に基づいた「良い」「悪い」で判断するのではなく、新しい文化としてそこから学びを得ることができれば、一人ひとりが生き方の手本に見えてくるだろう。その姿勢は障がいのあるなしに関わらず、社会の一員として、わたしたちが自由に、幸せに生きるための道標だ。

ふれ愛の家の仲間たち

個性豊かな35人が通っているふれ愛の家。

ユニークなパフォーマンスでみんなを楽しませる仲間たちをご紹介します!

 

安藤佑真さん

どんな悩みにも真摯に向き合う、

お悩み相談のスペシャリスト。

地球を救うための物語を記録する

「伝説ノート」を毎日書き続けている。

 

山田正人さん

だれにでもフレンドリーな

優しい心の持ち主。

リズミカルにけん玉を操り、

難易度の高い技もお手の物!

 

森田尚吾さん

独特の重ね着センスを持つファッションリーダー!

カラフルでどこか

ユーモラスな“鬼”の

イラストを描く。

 

大場竣さん

綿棒で立体物をつくる“綿棒アート”を

応用して自作したドローンを器用に操縦。

人やものを避けながら絶妙なバランスでコントロールする。

 

河村りつ子さん

あふれんばかりの笑顔がチャームポイント。

日々おんなのこの絵を描き続け、

自室には110枚ものイラストがずらり。

 

池田町障害福祉サービス事業所「ふれ愛の家」

住所/岐阜県揖斐郡池田町下東野18-8

電話/0585-44-1877

〒502-0841  岐阜市学園町3-42 ぎふ清流文化プラザ1F

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