バロメーター

 

赤やピンク、黄色、春のような淡い色使いの作品。黒や紫をベースにしたダークな世界観の作品。対照的な2つの作品には、どちらにも「ちゅーりっぷ」が咲いています。絵の作者は丹羽まゆみさん。岐阜県各務原市にある複合福祉施設「福祉の里あすなろ」に通いながら、施設の作業時間に1日1枚、色鉛筆やクレヨンで絵を描いています。マイペースでのんびりとした性格の丹羽さん。施設での集団行動では周りから一歩遅れたり、決まった作業に取りかかれないことがあるものの、絵を描かない日はありません。

「最初は私も本人も芸術だとは思っていなかったんです。絵を描いては本人が細かくちぎってしまったりしていてね。でも、描いている絵を作品として認めてもらい、展示されたことによって、自然と絵をちぎらなくなって、絵を描くことへのモチベーションも明らかに高まりました」。そう話すのは長年丹羽さんの支援員としてサポートしている長谷川昌代さんです。通所し始めた頃、ソファに描いた絵は「落書き」だったけれど、一枚の紙に描き額装されることにより「作品」になる。展示会場で自分の作品を見た丹羽さんは「私の絵!」と胸を弾ませました。絵を描くことへのモチベーションは施設での仕事にも表れ、少しでも長く絵を描けるように、仕事を早く終わらせようとする時期もありました。周りの環境や人からの影響に気持ちが左右されやすい性格だからこそ、絵に対する周りの反応が伝わったのではないかと長谷川さんは振り返ります。

昨年、施設では新型コロナウイルスの影響を受けて、作業時間の短縮を余儀なくされました。すると、丹羽さんの様子に変化が表れ始めます。もともと作業に没頭すると次の作業に移ることが難しいことが多かった丹羽さんですが、目の前のことに対する執着がなくなり、あっさりと作業をやめてしまうことが目立ちました。自分の世界に入ることも増え、長谷川さんが声を掛けても耳に入らないことも。その頃の絵には元気がなく、トレードマークである「ちゅーりっぷ」は小さくなり、文字中心の作品が多く見られるようになりました。「まゆみさんには絵を描く時間がとても大切なんです。もっと自由に絵を描く時間を取ってあげたいのですが、コロナによってそれができないのがもどかしいですね」。現在、丹羽さんは少しずつ生活と作業のペースを取り戻し始め、絵にも再び元気な「ちゅーりっぷ」が咲き始めています。

 

丹羽まゆみ にわ・まゆみ

1971年生まれ。各務原市在住。各務原市福祉の里あすなろ所属。2019年より「tomoniアートのフェスティバル 花さき、誇れ!」「多ような有りよう展inおおがき」などの展覧会に作品を多数出展。

〒502-0841  岐阜市学園町3-42 ぎふ清流文化プラザ1F

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