04.jpg

INTERVIEW

ONE LINE ARTIST 曽良貞義

 

一本の線が紡ぐ、終わりなき世界。

立体感のある幾何学模様や動物、果物。

図形の内側は迷路のように緻密に線が張り巡らされ、

驚くことに、その線を起点から辿ると、再び同じ点に帰ってきます。

ONE LINE ARTISTの曽良貞義さんが描く作品は、

一本の線によって描かれているのです。

 

「絵を描く」という能力が脳内にダウンロードされた感覚

双極性障害と診断されて、気分の浮き沈みが激しく悩んでいたある日のこと、突然紙とペンが持ちたくなったんです。自宅の机にノートを広げて、ぐちゃぐちゃと書き殴る様にペンを動かしました。そうしたら、急に頭の中に映像が浮かんできて。「絵を描く」という能力が脳内にダウンロードされた感覚でした。でも、当時はまだ脳と身体が繋がっていない感覚があって、これはひたすら描いて上手くならないといけないという衝動に駆られ、とにかく絵を描き続けました。そうしたら、それまで感じていた不安が消えましたね。自分はただひたすら絵を描いていればいいんだと。とても心が楽になって、「自分にはこれしかない」という自信に満ち溢れた気持ちでした。

 

練習すればきれいな絵が描けるようになるビジョンは

はっきりと見えていた

最初は作品と呼べるような絵ではなかったので、妻や周りの人は「この人何やってるんだろう?」という反応でした。それでも、練習すればきれいな絵が描けるようになるビジョンははっきりと見えていたんです。アートには無縁だったのに不思議ですよね。3年ほどで、自分でもびっくりするくらい細かい絵が描けるようになってきて、その頃から作品として展示や販売もするようになりました。絵には無限の可能性を感じていて、続けていけば何でも描けるという自信があり、迷いはありませんでした。もう修行ですよね。描きためた絵が100枚くらいになると、周りの人もアーティストだと認めてくれて。ただ、唯一の不安はお金で、それだけが今もしんどいです。自分には絵しかないけど、アーティストとして生計が立てられるなんてことはなかなかない。今後、どうしても超えたいところです。

 

自分の内側から湧いてきたものを作品にしたときに個性が生まれる

描く時は、片手でスマホをいじりながらとか、テレビを見ながらとかですよ(笑)。身体が勝手に動くことが多いですね。オートモードという感じです。真剣にやりすぎると手が壊れてしまうので、集中しすぎないくらいがちょうどいいんですよね。本当だったら真剣にガーっと描きたいんですけど、筆圧が結構高いので、疲れちゃうんです。そして、他人の真似事はしないというのは大事にしています。外からの情報ではなくて、自分の内側から湧いてきたものを作品にしたときに個性が生まれるんだろうと理解しています。1、2年前は自分のことをこうして話すことはできなかった。でも、こうして言語化できるようになったのは大きな変化だと思います。

 

絵と自分が一緒に進化している感覚

絵を見てくれた人にびっくりしてもらえると嬉しいですね。自分自身もびっくりするくらいだから、見ている人はすごく驚いてくれるんです。でも、自分は絵を描き終わると描いた作品に対しては全然執着がないんです。昔はこれは残しておきたいという気持ちがあったんですけど、今は全然。今ある作品が手元からなくなれば、また新しく出発できるので、手放した方がおもしろい。今に執着すると進化できないので。絵と自分が一緒に進化している感覚です。自分にとって絵を描くことは遊びだけど、その中に成長があるというか、今もまだ成長できると思っています。ゴールの見えなさやまだまだ先へいけるというところに惹かれるんでしょうね。

 

自分を好きになると周りの人も好きになれる

病気になってから自分を見つめる時間は増えました。自分自身と会話し続けることで、最終的には自分のことが大好きになりました。絵を描き始める前は、職場で周りの人が当たり前にやっていることが、なぜ自分はできないんだと自己否定をしていましたが、絵が認められることで自分自身も認められているような気がして。苦手なことがあるという部分も含めて自分を好きになることができました。自分を好きになると周りの人も好きになれるんです。反対に自分のことが嫌いだと、他人を好きになったり、共存することができない。大事なことを絵が教えてくれたような気がしますね。

 

曽良貞義 そら・さだよし

1976年愛知県出身。岐阜県下呂市在住。2012年に双極性障がいと診断され、ある日自分が衝動的にノートに描きなぐった絵を見た瞬間、それが進化しながら迫って来る未来の絵のビジョンが脳内に降りて来て、突如絵を描き始める。現在はシャープペンシルやカラーボールペンを使用して、始まりと終わりが一本の線でつながる「ONE LINE ART」を制作するアーティストとして活動中。